【ゆる恋】第3回 初級編 物語の骨組みを作る 後編

 
こんにちは、CYBIRDシナリオ部の三本です。
ゆる恋第3回は、第2回「物語の骨組みを作る 前編」の続きです。
前回記事を読み返していただき、ついでに右上の「いいね!」ボタンをポチッと押したりもしていただきつつ、
今回もゆる恋をお楽しみくださいませ。
前回は、「三幕構造」という考え方の元、恋愛ゲームシナリオの第1幕である物語の舞台を整えました。
今回は、メインディッシュである第2幕のあらすじに踏み込んでいきます。
 
◆第2幕で描くこと
① 課題解決のアクション
第2幕では、登場するキャラクターに、第1幕で提示された彼らの「課題」と「目的」に取り組ませましょう。
第1幕で例として出てきたキャラクターたちであれば、たとえばこんな感じです。

▼主人公(私)
攻略キャラクターの家へ連れて行かれ、無理やり押し倒され初っ端からピンチに。が、噛みついて威嚇し、「あなたのものにはならない」と気丈に宣言。が、彼の元を去り生活する見込みは経たないため一緒に住まざるを得ない状況に。が、幼馴染の庭師にこっそり連絡をとり、植物の扱い方を教えてもらい庭師を目指すことに。が、攻略キャラクターにバレて部屋に閉じ込められる。が、諦めず脱走。が、脱走した先で怪しい男たちに襲われて…….
▼攻略キャラクター(彼)
主人公に豪華な部屋や食事、ドレスなどを与えた上で、無理やり押し倒して籠絡しようとする。が、噛みつかれて余計に嫌われる。が、諦めるわけもなく、主人公が「花が好き」という情報を入手し、プレゼントしようとする。が、幼馴染とこっそり逢っていることを目撃して激しく怒り主人公を部屋に軟禁。が、反省して謝りに行こうとしたところで主人公の脱走に気づき、追いついたところで暴漢に襲われる彼女を目撃し……

このように、課題解決のアクションを積み重ねることで物語が進行していきます。
大事なのは、「課題解決のアクション」はキャラクター単体で実施するのではなく、登場キャラクター同士とコミュニケーションをとることで進行させていくこと、です。
今回の主人公の例でいくと、「攻略キャラクターに邪魔される」「幼馴染に手伝ってもらう」などが、これに当たります。
 
② キャラクターの魅力訴求
ゆる恋第1回の内容、覚えておいででしょうか。
恋愛ゲームにおいて大事なのはキャラクターです。
どんなにストーリーが面白くても、キャラクターの魅力を物語の中で存分に描けなければ、恋は始まりません。
ですが、難しく考えなくて大丈夫です。
「課題解決のアクション」のために起きるエピソードごとに、キャラクターの性格・持ち味の生きる見せ場を作ってあげる、これで解決です。
さっきから登場しているドS御曹司なら、たとえばこうです。

▼見せ場1 ドS訴求
冒頭から主人公を押し倒して「俺のものになれよ」と迫る
▼見せ場2 御曹司(おぼっちゃま)訴求
部下を総動員し、主人公の好きなものが何かを探らせる。
プライドが高いため、必死に好かれようと努力していることは主人公には秘密。
▼見せ場3 独占欲訴求
主人公とその幼馴染の密会現場を目撃し、一瞬、すごく傷ついた表情を見せる。
そのあと怒って主人公を閉じ込めてしまう。
▼見せ場4 実は優しいんだぜ訴求
反省して、閉じ込めたことを素直に謝りに行こうと決意する。
友人の男(他の登場キャラクター)に「好きなら追いかけろ」と背中を押される、などのきっかけがあっても良いかも。
▼見せ場5 実はフィジカルもすごいんだぜ訴求
脱走した主人公を追いかけて、彼女のピンチに遭遇。遅い来る悪漢を華麗に撃退!

 
③ 恋愛ステータスの変化
あらすじを作る時に、絶対に忘れてはいけない点がこれです。
恋愛ゲームであるからには、物語を読み進めるにつれ恋愛のステータスがだんだん変化していく必要があります。
だんだん恋に落ちていく過程こそが恋愛ゲームの面白みです。
物語の登場人物は何のきっかけもなく恋に落ちることはないと考えましょう。
「課題解決のためのアクション」「キャラクターの魅力訴求」が詰まった各エピソードが、恋愛のステータス変化のきっかけになっていること、これが重要です。
たとえば。

▼恋愛ステータス変化1 第一印象
攻略キャラクターに押し倒されて、なんてやつだ、と思う。
▼恋愛ステータス変化2 気になり始める
攻略キャラクターが部下に命じ、「主人公の好きな物は何か」を探っていることを、偶然知ってしまう。ただの嫌な奴ではないらしいけど……。
▼恋愛ステータス変化3 どんどん気になる
こっそり幼馴染と会ったことがバレた時に見せた、悲しそうな一瞬の表情にびっくり
▼恋愛ステータス変化4 無自覚に恋に落ちる
脱走して悪漢に襲われたところを、追いかけてきた攻略キャラクターが助けてくれる。
怒られるかと思ったのに「ケガがなくてよかった」と抱き寄せられてびっくり。思わぬ優しさにドキっとする。

――「課題解決のためのアクション」「キャラクターの魅力訴求」「恋愛ステータスの変化」の3つを絡み合わせながら、
紆余曲折を経て恋に発展、想いを交わした末に、第3幕のエンディングへ突入です。
 
◆第3幕で描くこと
① 「課題」と「目的」、その達成結果
第1幕で掲げた「課題」と「目的」が、ラストではどうなっているか?
これを、結末で残らず描きましょう。
今回例としてあげてきた登場人物たちならば、こんな感じになるでしょうか。

▼主人公(私)
御曹司が実はとても心優しい人だと知り、恋人同士に。彼とつりあう人間になるためにも、改めて手に職をつけることを決意し、自立することに成功する。
▼攻略キャラクター(彼)
実は昔から主人公のことが好きだったという事実が明らかに。
身分や財力が人の価値だと思っていたが、優しさこそが大事なのだと主人公とのコミュニケーションの中で気付き、強引に迫るのをやめる。
主人公に対し、真摯に愛を告白し、恋人同士に。

ここで思い出していただきたいのが、登場人物のみならず、プレイヤー(お客様)にも「課題」と「目的」があったということです。
恋愛ゲームにおいてプレイヤーが得る最終結果は、バッドエンドでない限りはこれ1つ。
攻略キャラクターを深く知り、恋人同士になった状態でゲームをクリアすることです。
 
② 主要キャラクターの成長・変化
第1幕と第3幕を比較した時、第2幕の紆余曲折を通し主要キャラクターたちが成長・変化していることも、重要です。
努力(第2幕の展開)の成果を、キャラクターがラスト(第3幕)で体現することで、物語のカタルシスが得られます。
この場合でいうカタルシスとは「読み終わったー! おもしろかったー!」という感覚です。
説明がヘタですみません……。やっぱり、最後も例でしめくくった方がよさそうです。

▼主人公(私)の成長・変化
嫌な奴、だと思っていた相手を、コミュニケーションを経て深く知ることで、愛するようになる。イケメン御曹司の恋人になる。
▼攻略キャラクター(彼)の成長・変化
思いを一方的に押し付けるのをやめ、主人公の心によりそえる人物に成長。
「お前を俺のものにはしない。でも、俺はお前のものだ」

攻略キャラクターと主人公が恋人設定のシナリオを書く上でも、成長と変化は必要です。
ふたりの関係が進み、変化することで、物語のカタルシスが生まれます。
※ちなみに、イケメンシリーズの特徴として「本編の第3幕に至った時、主人公は、自身のおかれた状況が大きく変化しても、そこまで大きく成長はしない」と書き添えておきます。
プレイヤー(お客様)が主人公に感情移入しやすいように、主人公のキャラクターを深堀りし過ぎないようにしているからです。
 
――というわけで、第3回、終わりです。
今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
難所は乗り切ったので(たぶん)、次回以降はもう少し、ライターの実務に踏み込んだお話などもできるかと。
 
 
さて、シナリオ部ではブログのみならず、引き続きリアルでもシナリオセミナーを実施しております。
タイムリーなことに、明日(2017/1/17)も開催予定です。
今回は、デジタルアーツ東京の生徒の皆様を、弊社1Fシアターサイバードにお招きし、イケメンシリーズの紹介や、イケメンシリーズのシナリオの書き方について、ライター陣がお話させていただきます。
当日の様子はまた後日、レポートでお届けできたら良いなと思っています。
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「ゆる恋」があなたのシナリオ執筆の一助となれば幸いです。
今後も、私たちと一緒に、面白いシナリオをたくさん生みだしていきましょう。
 
ゆる恋第3回 おわり
 
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