代表・堀と注目社長の対談シリーズ
《挑戦と情熱の経営》
第4回:株式会社enish 杉山社長「現場に任せるゲームのマネージ」

REPORT「イベント/プロモーション」

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[対談シリーズ]挑戦と情熱の経営

転載元:財界 2014 3/25号/構成:大平明

[第4回]

現場に任せるゲームのマネージ

株式市場へ新規に上場した注目のベンチャー企業経営者を招き、挑戦精神と情熱に溢れる経営手腕に迫るシリーズ。
第4回は、モバイルゲームの制作・発行を手掛ける株式会社enishの杉山社長に登場いただきます。

ネイティブが至上命題

杉山全功

すぎやま・まさのり/1965年生まれ。関西大学在学中、株式会社リョーマに在籍。1989年、ダイヤル・キュー・ネットワーク取締役に就任。その後、ザッパラス代表取締役社長、さらに日活取締役(現任)などを歴任し、2011年に株式会社enish(当時の社名はSynphonie)の代表取締役社長に。そして、3月26日の株主総会をもって現職を退任し、代表権のない取締役へ就任することが発表されている。

 杉山さんが社長になって、上場まであっという間でした。

杉山 最初は創業者の公文善之と安徳孝平から、ザッパラスを辞めた後に誘われて。ゲームのことは全然わからなかったけど、話を聞いたら面白そうだなと。それで2011年6月に加わりました。やはり日本は信用が大事なので、上場を一つの目標にして、1年半後にマザーズ上場。昨年12月に東証一部ですね。

 気になるのは、ゲームと関係の薄かった杉山さんは、経営者として何を拠り所に意思決定しているのかということ。

杉山 そこは創業者2人がゲームのプロなので、制作やプロジェクトの決裁権は彼らと現場に任せて。僕はゲームのKPIではなくPL等の方を見ています。

 ゲームは予算と合わせるのが難しい。その辺りは?

杉山 制作スケジュールはよく見ますね。現場の会議でヒアリングして敏感に感じ取り、上場も同時進行だったので、兼ね合いをみて予算に反映させました。

 なるほど。ゲームのスケジュールは本当に思う通りにいかないですね。

杉山 制作自体をマネージするのは現実的に厳しいので、その遅れで数字がどう変わるか管理するしかない。特にネイティブ(一般的に言われる「アプリ」)ゲームはその傾向があって。

 やはり御社は今後ネイティブを中心に挑戦していく?

杉山 はい。ネイティブでヒット作を出すのが至上命題です。『パズドラ』が爆発して、ユーザーはネイティブの面白さを知ってやり始めるわけです。ザッパラス時代の話ですが、占いジャンルの市場調査で退会ユーザーを追跡すると、血液型占いの次は姓名判断、星座…とやめてない。だったら受け皿を作ろうと。グラスタワーで、上から注いだシャンパンが下のグラスに落ちるように、ユーザーを回遊させたわけです。今のネイティブにおいても、次にどんな受け皿が当たるのか色々なジャンルでチャレンジします。今年は5本が制作予定です。

【株式会社enish】
2009年、株式会社Synphonieとして創業。モバイルサービスの制作・発行を手掛け、全国の飲食店情報と連動したソーシャルゲーム『ぼくのレストランⅡ』などの経営シミュレーション、『ドラゴンタクティクス』などのカードバトルを提供し急速な成長を遂げる。2012年9月、社名を現在のenishに変更し、12月に東証マザーズへ上場。さらに昨年12月には東証一部への市場変更を果たしている。

失敗を許容する会社へ

この対談は、本社1階のシアターサイバードにて、
社員に向けて行われた。

 企画は社内ですか?

杉山 はい。ただ開発は一部外注です。ブラウザゲームは開発と運用が一体ですが、ネイティブはリリース後の運用ラインが大切なので、別に立てますね。

 運用のきめ細かさは肝心ですよね。作ったゲームを成長させていかなくてはならない。

杉山 パッケージじゃないですから。運用にはポジティブに人件費をかけたい。そして広告。

 僕は広告は結構好きなのですが、ネイティブはマスに告知したほうが良いですね。ユーザーは興味を持てば無料ダウンロードという間口の広さがあるし。

杉山 マスとは相性が良いでしょう。ライトユーザーが対象ですしプラットフォームに登録する必要もないから。一方で開発費は高くなってきています。最初はブラウザで1千万円もかけなかったのがカードバトルが出て5千万円になり、今ネイティブは1億円超えで、2億円かかることも。それで昨年資金調達したわけですが、ネイティブは開発に1年程かかるので来年分もとなると約1.5倍の予算が必要。仮に広告費込みで3億円として5本だと15億円。再来年も考えたらさらに…。

 予測不能なことが多いから、何かあっても大丈夫なように経営の体力や体制を作っておくと。

杉山 おかげさまで信用も培え、キャッシュも調達できた。あとは良いものを作ることですね。

 では、その良いものを作るために心がけていることとは?

杉山 色々な意味でオープンな環境です。KPIも含めて毎日社内に数字を開示したり。経営側は環境を与えて、現場には裁量権を持たせる。「失敗してもいい。ただ工夫して次は乗り越えろ」と。変化を恐れず、失敗を許容する会社でありたいです。

 そうして精度が上がっていくわけですね。次の挑戦は?

杉山 海外展開をより進めたい。まずは現地パブリッシャーにライセンスアウトで。運用も現地に任せて教えていきたいです。

聞き手

株式会社サイバードホールディングス代表取締役社長兼グループCEO

堀主知ロバート

ほり・かずともろばーと/1965年、米国ワシントンDC生まれ。関西学院大学卒業後、ロンドンへ留学。98年、モバイルサービスを提供する株式会社サイバードを設立、代表取締役社長に就任。2002年、『BusinessWeek』誌アジア版の「The Stars of Asia 25」に、『TIME』誌の「世界のビジネスに影響を与えた若手15人」に選出。05年、世界経済フォーラムの「若き世界の指導者237人」選出。