代表・堀と注目社長の対談シリーズ
《挑戦と情熱の経営》
第2回:オイシックス株式会社 高島社長「うまいものと生産者への愛」

REPORT「イベント/プロモーション」

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  •  

[対談シリーズ]挑戦と情熱の経営

転載元:財界 2013 秋季特大号/構成:辻本圭介

[第2回]

うまいものと生産者への愛

株式市場へ新規に上場した注目のベンチャー企業経営者を招き、弊社代表の堀が、その挑戦精神と情熱に溢れる経営手腕に迫る対談シリーズ。第2回は、安心食品宅配ネットスーパー「Oisix」で知られるオイシックス株式会社の高島社長に登場いただきます。

脳を刺激しリピーターに

高島宏平

たかしま・こうへい/1973年生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、マッキンゼー入社。eコマースグループのメンバーとして活動。2000年6月、オイシックス株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。2006年Entrepreneur Of The Year Japanファイナリスト、2007年「ヤング・グローバル・リーダー」で世界のリーダー150人に選出。同年、起業家表彰制度「DREAM GATE AWARD 2007」、企業家ネットワーク主催「企業家賞」受賞。

 「Oisix」の起業時はユーザーがいない状態だと思いますが、どう生産者とのパートナーシップを築きましたか?

高島 とにかくお客さまの声をエンジンにしましたね。「美味しかった」の声を生産者に地道に届けて、関係を強化していきました。創業当時、生産者にとって消費者から直に評価されるのはまだ初めての経験でした。それが強いモチベーション喚起になりましたね。

 一方のユーザーはどう集めていったのでしょう?

高島 リピート率の向上に尽きます。例えば商品が届く日に生産者の声をメールします。「このほうれん草は甘いので、まずは何もせずに生のまま塩だけで食べてみてください」と印象的に伝える。すると「そんなほうれん草は初めてだ」と会話が弾んで集中力も上がり「Oisixってすごい!」と感動してもらえる。食事は舌だけでなく脳でも食べているので、食卓のコミュニケーションをいかに刺激するかを考え抜いて、費用をかけずにリピート率を高めました。

 脳に訴えてユーザーの心をつかむ戦略は素晴らしいですね。商品は在庫しているのですか?

高島 いえ。基本的に「注文を受けてから収穫して届ける」モデルです。すぐ届く利便性は捨て、価値のある品質に徹底的にこだわって、Oisixの絶対的な基準である「作った人が自分の子供に安心して食べさせられる食品を食卓へ」を追求しています。簡単に言うと「うまいものがいい」のです!

 うまいものを見つけるのは、やはり現地へ足を運んで?

高島 はい。生産者は「自分で食べる用」と「売る用」を分けて作っていることが多く、前者はめちゃくちゃうまいのです。

【オイシックス株式会社】
2000年6月、「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を理念として設立。安全性やおいしさの観点で、厳選した食材を宅配するB to CのEC事業を主軸に、株式会社ごちまる向け卸や、店舗販売事業も展開。付加価値の高い商品を約3800品目扱う。会員数は7万6499人(2013年5月)。2013年3月、東証マザーズに上場。

無理解な風評被害に一石

   

この対談は社員に向けて行われたもの。

 

 それは食べたい! ただ3・11以降、放射能汚染が問題になりました。でも生産者は仕入れてもらえないと困るわけですよね。そんな難しい判断では何を大切にしますか?

高島 大前提として私たちはお客さまの「目利き代行業」ですので、放射能問題で基準外のものは売りません。しかし、「Oisixの基準外の場合は売らないけれど、全て買い取ります。でもそのことは公表しません」という道を選びました。「公表しないことは、本当に安全なのかという不安を生む」と批判も受けましたが、“一箇所で検出されただけで、その地区全体がダメ”と判断される、無理解な風評被害に違和感を感じたのです。

 ハートフルですね。企業経営は効率重視になりがちですが、そうした部分に企業の人となりが出ますね。

高島 僕らの恩人は美味しいものを作る人たち。生産者を選ぶのは社員を採用することに似ていて、結局「人」です。優れた生産者は移転しても美味しいものを作れます。生産者との関係性がビジネス上プラスになるという判断ですよ。

 その他にこれまで大変だったことは何でしょう?

高島 創業2年目に配送センターが突然潰れ、24時間で新しい倉庫を稼働しなければ倒産する事態に陥ったことですね。その時に学んだのは、トラブルが起きたときこそ前向きに解決するということ。そこで「トラブルを乗り越えようソング」を決めたんです(笑)。スティービー・ワンダーの『To Feel The Fire』ですが、不眠不休でテンションもおかしい中に大音量でかけると、みんな「うぉー!」と叫んで椅子を叩いたりして(笑)。

 おもしろい! 音楽が流れたら「これは一大事や」と(笑)。でも「頑張ろう!」となりますね。では最後に、今後の野望は?

高島 「豊かな食生活をできるだけ多くの人に」という理念から規模の拡大は必須です。EC事業の成長はもちろん、現在、店舗2店とスーパーにコーナーを6つ出していますが、実店舗戦略を成長させたい。また農業や水産業のサプライチェーン改革を成し遂げ、さらに手頃な価格で豊かな食生活を送れるサービスを作りたいです。

聞き手

株式会社サイバードホールディングス代表取締役社長兼グループCEO

堀主知ロバート

ほり・かずともろばーと/1965年、米国ワシントンDC生まれ。関西学院大学卒業後、ロンドンへ留学。98年、モバイルサービスを提供する株式会社サイバードを設立、代表取締役社長に就任。2002年、『BusinessWeek』誌アジア版の「The Stars of Asia 25」に、『TIME』誌の「世界のビジネスに影響を与えた若手15人」に選出。05年、世界経済フォーラムの「若き世界の指導者237人」選出。