代表・堀と注目社長の対談シリーズ
《挑戦と情熱の経営》
第1回:株式会社エニグモ 須田社長「危機局面での決断と覚悟」

REPORT「イベント/プロモーション」

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  • 危機局面での決断と覚悟
    株式会社エニグモ 代表取締役 最高経営責任者
  •  

[対談シリーズ]挑戦と情熱の経営

転載元:財界 2013 8/27号/構成:辻本圭介

[第1回]

危機局面での決断と覚悟

株式市場へ新規に上場した注目のベンチャー企業経営者を招き、弊社代表の堀が、その挑戦精神と情熱に溢れる経営手腕に迫る対談シリーズ。第1回はソーシャル・ショッピング・サイト「バイマ」で知られる、株式会社エニグモの須田社長に登場いただきます。

バイマのブレイクスルー

須田将啓

すだしょうけい/1974年生まれ、茨城・水戸出身。慶應義塾大学院 理工学研究科 計算機科学専攻 修士課程修了。2000年、博報堂入社。04年、株式会社エニグモ設立。05年、ソーシャル・ショッピングサイト「バイマ」開始。12年、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。同年7月、エニグモは東証マザーズに上場。同年末、米国のソーシャルファッションサイト「Kaboodle」を運営するイメージネット社へ資本参加。

 昨年7月に見事マザーズに上場され、「バイマ」(※)が着実に成長していますね。

須田 おかげ様で、トップバイヤーになると年間2億も売り上げ、夫より稼ぐ主婦もいます。ただ2005年の開始当初8カ月は、取扱高が月100万円で売上は8万円しかありませんでしたが。

 それは厳しい! その苦境をどう打破したのですか?

須田 事業会社から6億円を調達するために売上が必要で。思い切って販促費を投下してユーザー数を約10万人に、取扱高を3カ月で1000万円へ増やしたんです。

 売上月8万で6億円も調達したんですか!? それは口がうま、いや交渉上手ですね(笑)。それに、プラットフォーム系サービスで難しいのは「鶏が先か卵が先か」の問題ですが、バイマは商品数とユーザー数のどちらを先に打開したのですか?

須田 今で言えば、履歴データを解析すると、流行の約2年前から動く感度の高いユーザーがいて、彼女らが「何に目を付けているか」を常に分析しています。06 年当時も、アバクロが人気になる前からユーザーが動いていて「これは売れそうだ」と。そこで特集や広告をしかけ、ファッション好きユーザーをつかんだのが最初の突破でした。そこへアフィリエイト、リスティング、バナーなど広告を押し込んで。その中でリスティングなら2年半での回収が見えたので、月1000万円の赤字を胃の痛い思いで出しながら、3年半で単年黒字に持っていきました。

 随分無茶しましたね(笑)。

須田 4億は使いました(苦笑)。今なら回収は半年ですが。

【バイマ(BUYMA)社】
株式会社エニグモの創業事業。世界 75 カ国に在住する約4万人の日本人バイヤーから、世界中の魅力的な商品をお得に購入できる、これまでにない新しいソーシャル・ショッピング・サイト。現在、会員数は120万人を突破し、アイテムは年間240万品が出品され、ラグジュアリーブランドから日本未上陸のトレンドアイテムまで幅広く揃う。2013年1月期の取扱高は約128億円。

経営判断という覚悟

   

この対談は、本社1階のシアターサイバードにて、社員に向けて行われた。

 

 クローズしたサービスもあると聞きましたが、最大のピンチはいつでしたか?

須田 リーマンショック後、何もしなければ半年で倒産という局面ですね。その際にクローズした「プレスブログ」は、最盛期は利益1億円ほどあったのですが、リーマンショックで一気に赤字に。数千万円での譲渡話もありましたが、もし譲渡したら、引き継ぎの手間暇やコストなど限りある経営資源を非採算事業にかけることになり、それよりは未来ある事業へ注力すべきだと、決断しました。

 それが一昨年で、そこから約11カ月でV字回復し上場されるわけですが、その“どん底”での判断が大変だったのでは?

須田 はい。本当につらく不本意でしたが、社員の何人かには辞めてもらい、大坂や海外のオフィスも撤退し、全事業を縮小してバイマに集中したのです。それまでは風通し良く温かい社風が、リストラのあった時は一瞬変わったかな…。でも今は様々な困難を一緒に乗り越えて、エニグモが好きな社員が集まっていて、社風も元に戻りましたね。

 なるほど…。実は弊社でも近年、“会社のピンチにおいて、変われない人には乗船切符はあげられない”と伝えた局面が初めてあったのですが、ずばり、苦しい時にこそ大切なことは何だと思われますか?

須田 まさにその時、リーダーシップが問わるのだと思いましたね。例えるなら、それまでは仲間同士のハイキングで天気も良く、みんなで頂上目指そうぜと言っていたのが、急に吹雪いてきて、気づいたら食料が不足し全員を食べさせられなくなっていて。でもここで自分が躊躇していたら全員が遭難すると思ったので“山を下りられる人は下りてくれ。残った人でもう一度頂上を目指そう”と。

 誰かがつらい決断をしなくてはならない厳しい局面ですね。

須田 はい。そこに至るまでの自分の判断の甘さが、社員、その家族、取引先、みんなを不幸にしたと痛感しました。その時、経営者としての覚悟を学んで、僕は変わりましたね。今は一つひとつの局面で、本当の意味で経営判断を下せるようになったと思います。

 まさに。経営者は、どんな小さな意志決定も、人の人生に影響を及ぼしかねない、重大な責任を負っていますね。

聞き手

株式会社サイバードホールディングス代表取締役社長兼グループCEO

堀主知ロバート

ほり・かずともろばーと/1965年、米国ワシントンDC生まれ。関西学院大学卒業後、ロンドンへ留学。98年、モバイルサービスを提供する株式会社サイバードを設立、代表取締役社長に就任。2002年、『BusinessWeek』誌アジア版の「The Stars of Asia 25」に、『TIME』誌の「世界のビジネスに影響を与えた若手15人」に選出。05年、世界経済フォーラムの「若き世界の指導者237人」選出。